――ああ、まったくなんでこんな事になったんだか。

 久しぶりに会った幼馴染と話をしていたらいきなり空から女の子が降ってきて。
 それだけならまだしもその子は言葉が通じない上に、その子のためにファラは村を出るなんて言い出した。
 挙句の果てにその子は俺に付いて来いと言い出すし、ファラも俄然乗り気だ。

 ……面倒臭いことになった。





「魔神剣!」
 キールに会う途中に出会ったモンスターを倒しながら思い返す。
 毎日の日常をどうやって間違えたら、どこをどうしたら俺はこんなところにいることになるのかと。

「さっすがリッド、やっぱり剣の腕だけは確かだよね」
「…………」
 ぱんと手を合わせながら、笑顔で何か引っかかるような台詞を言ってくるファラにため息をつきながら、キャンプの用意をする。
 メルディだと多分名前だけ分った少女は、さっきからなぜか踊っている。
「わーメルディ上手い上手い!! ね、リッドもそう思うでしょ?」
「……まぁな」
「なーにその返事! もうちょっと楽しそうにしなさいよー」
 冗談を、と思う。
 毎日が平凡で平和、最高じゃないか。適当に食料を得てあとは寝たり空見たり。それで不満は無いのに。
 なのになんでこんなところに居るんだろう。ファラが村を出ると言ったときからどこかで予想していたけど。

 ――早く、帰りたい。

 何よりの本心をなんとか口に出さないことに成功する。
 良く当たるリッド自身の勘は、きっとキールに会うだけじゃなんともならないような気がしていた。
 キールという人物を思い返しても、転んでばかりの泣き虫の仕方のない奴というイメージが拭えない。そんな奴がいくら年月が経って、今ミンツにいるからって頼りになるとも思えなかった。
 かといって今、自分がどうにかできる問題でもないのだけれど。

 考えれば考えるほど恐ろしいことになっていく気がして、思考を中断した。
「出来たぞ。飯にするか」
「うん。ご飯は私が作るよ! 楽しみにしててね」
 そう言い残して適当に作ったキャンプの近くでファラが料理の支度を始めた。
 ファラの料理にありつけるだけいいとしよう、と思い込みリッドはその場に座り込んだ。
 いまだに踊っている少女を横目で見ながらも、リッドの頭にはなんだかとてつもない面倒事が待っていそうな予感。

「……はぁ……」

 そうして、面倒なことをどうしたら早く済ませるかを考える。
 その先の最悪な予想が見える自分の勘を、初めて当てにしないようにしながら。

最悪な勘